ブリッジラーニングの本棚 #2『知的好奇心』

「学習者中心の学び」に関する本を、毎週一冊をご紹介する新企画「ブリッジラーニングの本棚」

みんなが知っているあの本から、なかなか手が出ず読みきれないあの本まで、学びに深く関わる一冊をご紹介していきます。

2冊目は、波多野誼余夫 稲垣佳代子著 『知的好奇心』です。

人間ならみな「できるだけ楽をしたい」と思っているのだろうか?

そんな問いから始まるこの一冊は、伝統的な心理学の理論である「ムチとニンジン(アメとムチとも言い換えられる)」がなければ学習も労働もしないという、「ニンゲン怠け者説」に、実証的な観点から異を唱え、私たちの内なるところから生まれる「知的好奇心」とはどのようなもので、どうすれば伸ばすことができるのか?について論じられている、古典的名著です。

ここで、中心となるのは「動機づけ」の理論。著者の2人は、内から湧き出してくる、自発的に情報を得ようと活動する「内発的動機づけ」の理論を提示しています。

それは、「人間は報酬や罰がなければ活動的にならない」という伝統的な理論では見落とされてしまう、「人間への信頼」に光を当てるものです。


文中のことばをいくつか引用しながら、知的好奇心をご紹介しましょう。


人間は、条件さえ与えられれば、活動的で好奇心が強く、よく努力し、他人のことを思いやるはずだ。いまもしそうでないとしたら、それはこの条件が与えられていないからに他ならない
ーこれが、「内発的動機づけ」の考え方であり、それを強調する立場なのである。

波多野誼余夫、稲垣佳代子著、『知的好奇心』中公新書 p.70より


人間がもともと持つ「知的好奇心」それが発揮されるかどうかは、その条件によって変わるということです。内発的動機づけを信じ、学びの場をつくっていくことこそが、その第一歩といえるかもしれません。



指導するおとな自身が知的好奇心の強い存在になることが必要だ。子どもにいくら新しい物に積極的に取り組むことをすすめても、その当人が、未知の場面、不慣れな場面を避けてばかりいては困る。おとなのそうした態度は、いつのまにか子どもに伝わってしまうからだ。

波多野誼余夫、稲垣佳代子著、『知的好奇心』中公新書 p.110より


そして、「知的好奇心を伸ばしたい」と思うことよりも、もっと大切なことは「自分自身が知的好奇心の強い存在になる」ということ。子どもの目は、しっかり私たち大人の態度を見ていますし、いとも簡単に見抜かれてしまいますよね。



まず第一に考えられるのは、学習者である子どものイニシャティブをもっと尊重すべきではないか、ということだ。

波多野誼余夫、稲垣佳代子著、『知的好奇心』中公新書 p.137 より


この文章が抜き出された章のタイトルは「学習者中心の教育」。そのために著者の2人が大切にしているのはこの、「学習者にイニシャティブの尊重を」という点と、「学習者間の能動的相互交渉を」という点です。

実はこの本、初版は昭和48年(1973年)と約半世紀前なのですが、最近の「新しい教育」として出版されている本にも通ずる、外見は色褪せたとしても、中身は今でも色褪せない本なのです。

「学習者中心の学び」が広がりつつある今だからこそ、改めて読みたい一冊です。


ブリッジラーニングでは「学習者中心の学び」をテーマに、学びに関心が高い方が集まり、世界の先端的な学校と学びにまつわる名著を対話して学ぶ「勉強会」を月に2回行っています。詳細が気になる方はこちらから。

『兆しと気づきの勉強会 – 名著と世界の先端事例から学ぶ』 

投稿者: 山﨑 智仁

bridge learning主宰、一般社団法人 FutureEdu理事、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員。 学びの研究と実践の両輪で走り続けるジェネレーター。人と社会の研究活動を続けながらも、特定非営利活動法人東京コミュニティスクールでの探究する学びの実践経験を活かし、教師の学びのコミュニティづくりに奔走する。

コメントを残す