ブリッジラーニング卒業生インタビュー第一弾は、2020年秋に参加され、今春にはサポーターとして参加者に伴走してくださった、聖学院中学校高等学校の佐藤充恵先生です。2021年春には、ご自身が勤める学校から同僚の先生がお二人プログラムに参加されたことで、学習者中心の学びへの理解がより多面的に深まり、実践に活かすアイデアが具体化されたそうです。先生方が共に学ぶことで互いが成長できる様子がビビッドに伝わるお話です。
佐藤 充恵 聖学院中学校高等学校 新クラス設置統括部長 前任校 三田国際学園中学校高等学校(2013-2020)で理科主任を5年間務め、ICTを活用しながら生徒たちが自ら考えたくなる(思考の扉を開く)授業を推進。 現任校では2021年度よりグローバルイノベーションクラスを立ち上げ、モノづくりコトづくりを通して世界貢献できる人材の育成を目指す。「人を幸せにできる人ってどんな人だろう?」という問いに始まり、STEAMやリベラルアーツの授業を通して生徒達と一緒に探究をしている 校内研修ではICEモデルを校内に普及しながら、それぞれの教科独自の視点と教科を横断した学びの構築に挑戦中。 日頃心がけているのは、思いついたことを口にすること。もやもやも大切な気づきであること。 |
校内にも共に学ぶ仲間ができてから、佐藤先生にはどんな良いことがありましたか?
ゲストとの対話や協働ワークで、自分が感じたことはいったい何だったんだろうと、改めて考えることができました。
例えば、ゲストの船木成記さんの話を同じように聞いたにもかかわらず、心に残った話や感じていることが、3人それぞれ少しづつ違いました。でも同じものを見たことで、その違いから対話が生まれる。そして対話することで、自分が感じたことは何だったんだろうということも、改めて考えられるんだと思いました。
これはブリッジラーニングでの、他校の先生とのチーム対話でも同じことが言えますね。
話を聞いている時って、その場にいるからこそ感じることがたくさん生まれるのだけれど、それを全て持って帰るのは難しいですよね。自分で全て回収できていないというか、その時に流れてしまっているものもあるし。
それに、私はあまり言葉にして人に伝えるのは上手じゃないので、自分が「いいなぁ!」と思うものを、同僚と一緒に見ることができたのは大きかったです。「いいなぁ!」いうのは分かっても、何がどういいのかはちょっと伝えられません。「一緒に見て・やってくれたら、あなたもきっとそう思うよ!」ということってありません?(笑)
同じ経験をした人達でそれぞれ、気にかかるところが違い対話が生まれるというのもいいなぁと思いました。「先生」と呼ばれる方達だって関心領域とか強みなんかも、もちろんそれぞれに違うはずだから、チームになっていったら面白いはずですよね!
自分が心を開いて発言したことが、チームへの貢献になっている!と感じる経験があると、先生達もチームで協働するってことにトライしてみるんじゃないかと思います。子どもと一緒で、大人も「すごく学べた!」という喜びを一度経験したら、その先もきっと学び続けますよね。
先生方って専門領域をどんどん深めることは得意で、努力している方が多い。でも領域を広げることって、しないわけじゃないんですけど、なかなか難しいことだと思います。広げるためには仲間とか、こういうブリッジラーニングのような場、自分にはない視点での学びの場があるのは大きく違います。人と一緒に何かをすることで生まれる学びって、一人で考えていたり勉強していたりして生まれる学びと種類が違いますよね。
しかも一度だけの協働じゃなくて、チームとして仲間になっていく感じ、あの感覚。それはブリッジラーニングで大事にされている、自分が安心して発言できるという経験、そして発言することがその場への貢献になっていたりとか、人が心を開いて発言してくれたことが場への貢献になっていると感じる経験があると、それが大事だって分かると思うんです。私達教員って、チームになっていく経験をする機会がどうしても少ないんですよね。
生徒さんと向き合う日々の中では、チームになる必要性を感じる場面もなかなかもてないですよね
そうですね、それが大切だってことを経験する機会が少ないので、薄れちゃうというか、埋もれちゃう。大事なことって他にもいっぱいあるので。
春にブリッジラーニングに参加された同僚の先生たちも、人と一緒に何かをつくるとか考えるとか、一緒に乗り越えるとか、一緒にモヤモヤするという体験をしたことは大きかったと思いますね。
そうそう、T先生は「いや〜、ブリッジラーニングに参加してみて、自分の見識って狭いなぁと思いましたね〜」と仰っていました。T先生は今の学校が初任校で、年齢は30歳すぎなのですが、他の学校の先生方が、どんなことを考えていて、どんな実践をしているかを知る必要性を感じたみたいです。
そういう視点は今まであまりなかったのだと思います。決められた時間で、求められる業務をきちんと行い、生徒と一生懸命向き合うことがまず何より大切で、ある意味それで良かった。
一生懸命やることは善ですものね。でも見識も学校での動き方も、幅を拡げていきたいと思われたのですね。
T先生はすごく賢い方で、仕事の完遂の仕方もとてもスマートなんです。与えられた場所で一生懸命を繰り返してきたのだと思います。T先生に限らずですけど、普段の業務に直接必要とされないことって、無駄に見えちゃうところがあるのかもしれません。
けれど、本人の中で自分を拡げた方がいいなとか、もっと学んだ方がいいなと思ったんだと思いますよ。この経験ができたのはすごいと思います。
寄り道してそれが何に繋がるのかって、きっと見えないですよね。普通に仕事していたら。
優秀な方ほど、近道で一番効率よく仕事をすることってあると思うんですけど、そうじゃないところに結構学びがあったりしますよね。先生の重ねている努力が子どもに還元されるためには、一見寄り道に見えるような学びがとても大事なことなんだと思います。T先生にもそういう視点ができたんだと、話をしていて思いました。
春に参加された若手の先生方は今度、校内研修をつくる側になると伺いました。
ブリッジラーニングで学んだことを元に、お二人がワークショップ形式の研修を校内の先生向けにしてくれるんです。どこをポイントにした内容にするかはこれから企むんですけど。研修担当の依頼を快く引き受けてくれたのが嬉しいですね。
学校としては、研修費として2人に投資をしたことに対する還元の機会になります。お二人はすごく優秀な方達なので、オーナーシップをもって中に広げる立場を担っていただきたいと期待しています。
ご本人たちが楽しんでやっていただけそうな方なのが、またいいですよね。
お二人のそういった姿勢に刺激を受けて続く方がさらに出ていて、次のブリッジラーニングに参加を希望されています。
今回のお二人のように、学んだことを還元してもらえる仕組みは学校と先生がWin-Winで素晴らしいなと思っています。そして子ども達と同じように、先生も学んだことをアウトプットすることで本当に自分のものになるのだと思います。
(聞き手:日出間 真理子)

bridge learning主宰、一般社団法人 FutureEdu理事
人と人を深いところで繋げプロジェクトを生み出していく、現場大好き人間。NPO法人ETIC.で、社会起業家らの学び合いのコミュニティを企画運営する経験を活かし、日々挑戦する先生の意図を共に紡ぐ場作りをする。
どんな人も試行錯誤の中でまなび続ける力をもち自らの人生を切り拓いて欲しいと願うのは、鉄道会社で現場社員のリーダーシップを高める人事制度を作った時の経験から。Boston University教育大学院へ社会人留学して、教育の道へ転身した。一児の母。
「仲間と共に学ぶことはなぜ教員を成長させるのか? 聖学院中学校高等学校 佐藤充恵先生インタビュー」に3件のコメントがあります