先生の知的冒険への一冊 #006 森 美緒さんのおすすめ図書

日々挑戦する先生に、推薦者がこれを!と考えた一冊をご紹介するシリーズ「#先生の知的冒険への一冊」。第6回は、京都府立南丹高等学校 総合学習科(探究・プロジェクト学習)・音楽科 教諭で、ブリッジラーニング「学習者中心の教育実践プログラム」の2期に参加された、森 美緒さんに選書していただきました。

みをさん(*)は、教員キャリアの中で青年海外協力隊として中央アメリカのベイリーズへ赴任するなど、様々な経験をされています。自分にしか見えてないモノ、自分が思い描く理想の世界、それを信じ、諦めず一歩ずつ形にしてきた、まさに「探求」の人だなと私は感じます。
(* ブリッジラーニングでは互いを “呼ばれたい名前” で呼び合います!)

そんなみをさんが、「学習者中心の学びに関心のある先生方に向けてオススメしたい本」はきっと、これまでのご紹介本とまた少し違ったものになるんじゃないか。素敵な予感がして、今回お願いをさせていただきました!さて、オススメの一冊は…!

『音楽』

小澤征爾、武満徹

森 美緒さんからひとこと

「なんでお能やお琴の音楽は、保育園で歌ったりピアノで弾く音楽と全然違うんだろう?」

これは、私が5歳の時に抱いた疑問です。4歳からピアノを始めた私は、両親の影響で「能楽」や「琴」に触れる機会も多くありました。能楽堂で大人たちが「良かったねー」と述べるのを聞く度に、「なにが良かったの?!」と混乱する幼いころの私。「なんで?何が?」が溢れて止まりませんでした。

その「なぜ?」が私自身の探究の始まりです。今もその「なぜ?」を知りたくて、音楽についてはもちろん、比較文化学・哲学・心理学・コミュニケーション学・脳科学など、様々な本を読んでいます。その中で出会ったのが今回紹介する「音楽」という本です。

この本は、私の興味の中心である「西洋と日本の違い」について語られているだけでなく、教育・自由・主体性・多様性など、「指揮者」と「作曲者」という、“自らは音を奏でない人”だからこそ紡ぎ出される「言葉」があり、学習者中心の学びを目指す「教員」としての私にも多くの気づきを与えてくれます。

森 美緒さん プロフィール

京都府立南丹高等学校
総合学習科(探究・プロジェクト学習), 音楽科 教諭

同志社女子大学学芸学部音楽学科で日本音楽を研究。日本料理の料亭に勤務した後、2006年4月より京都府立高校の音楽科教員として働き始める。15年6月、青年海外協力隊員としてベリーズに赴任(現職参加)。トレド・コミュニティ実業高等学校に配属され、音楽の授業の実施や同僚教員への技術指導に取り組む。17年3月に帰国。復職時に感じた「学校教育、このままで良いの??」という違和感を原動力に、産官学民連携やPBLの授業に挑戦。最近気になることは「心地いいってなんだろう?どういうことなんだろう?」

ひとこと紹介文を読んでみなさんも、みをさんが子供の頃から追いかけてきた「なぜ」を出発点に、次第に教員としての「なぜ」へと繋がっていく様に、関心の扉を少しづつ開かれたのではないでしょうか。きっと生徒さんと一緒にいる時もみをさんは、ご自身の探求する姿で自然と生徒さんに、ひらめきを与え・励まし・元気づけ・共鳴を呼んでいるのだろうなと私は想像しています。

と共に、個と多様性の尊重にはいつも心を配っていらっしゃることも感じています。みをさんは、相手の個性から事の背景まで様々に想像し「人と人」として生徒や同僚ひとりひとりと関係を築く豊かな感性が、本当に美しい人です。
生徒に対しても『音楽を通して「他人とのちがいを面白がる」「他人ともちがってもいいんだよ」「癒やし」を伝えていきたい。』と仰っていたことを、私はとても印象的に覚えています。

そんなみをさんが『音楽』という本からどんなことを読み取られたのか、気になりませんか?教えることや、内省、人と関わるエネルギー、そして音楽にかかわる歓びなど、きっと様々な発見があるのだろうと思います。ぜひお手にとってみて下さいね。

#先生の知的冒険への一冊」では、書物と対話し、自らを振り返り、様々な気付きを経て、さらなる知を求め、次の一歩を踏み出すことを応援しています。そんな風に本を通した十人十色の学び方で、知的冒険の扉がひとつひとつ開き、日々の実践を応援できると嬉しく思います。

投稿者: 日出間 真理子

bridge learning主宰、一般社団法人 FutureEdu理事 人と人を深いところで繋げプロジェクトを生み出していく、現場大好き人間。NPO法人ETIC.で、社会起業家らの学び合いのコミュニティを企画運営する経験を活かし、日々挑戦する先生の意図を共に紡ぐ場作りをする。 どんな人も試行錯誤の中でまなび続ける力をもち自らの人生を切り拓いて欲しいと願うのは、鉄道会社で現場社員のリーダーシップを高める人事制度を作った時の経験から。Boston University教育大学院へ社会人留学して、教育の道へ転身した。一児の母。

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